- No.04 モズ属不明種についての考察
 神奈川県平塚市において、2012年-13年に越冬した種不明のモズが観察された。発見当初からセアカモズではないかと言われており、山階がセアカモズと同定したという誤情報がそれに拍車をかける形となった。しかし、この個体はセアカモズではない。今回の考察にあたっては、まずセアカモズを否定し、片親がシマアカモズである交雑個体であることを提示してもう片親を推測していくという形をとる。
1.セアカモズであることの否定
 最も重要な点が尾羽のパターンだ。この点について、より明瞭にセアカモズを否定する材料とするためには、この個体の年齢識別を先に行う必要がある。嘴基部が淡色であること、下面に幼羽が確認できることから成鳥でないことは明白だ。第一回冬羽と判断されている場合が多いが、もし第一回冬羽であるならば上面にも幼羽が確認できるはずだ。下面の幼羽の枚数も第一回とするには少なすぎる。よってこの個体は第二回冬羽と推定される。ここで尾羽に注目すると、セアカモズの特徴であるハシグロヒタキパターンが全く見られない。2007年に香川県で観察された個体も換羽が進んでから白色部が出てきたことを引き合いに、この個体についてもまだ若いことが原因でパターンが出ていないのではないか、と主張する人もいるようだが、香川の個体は第一回冬羽であり、第一回夏羽への換羽中に白色部が出てきたのである。とすれば、第二回冬羽であるこの個体に全く認められない(←@)のは明らかに不自然である。この特徴はセアカモズを積極的に否定する重要な材料となる。次に、EPTである。角度により正確な枚数の測定は難しいが、この個体は4~5枚(←A)に見える、セアカモズは7~8枚であるから合致しない。この特徴も積極的な否定材料だ。腹部の色がピンクではなく黄色味を帯びていること(←C)や、過眼線の上の細い眉斑が認められないこと(←B)もセアカモズとは異なる。最後に初列風切基部の白斑である。この白斑はセアカモズは基本的には出ないが、海外の文献を見ると、「Not here a very small white primary patch,which occurs occasionally」との記述があることから、稀に出る個体もいるようだ。よって白斑が出ているからと言ってセアカモズを否定するものとはならないだろう。しかし、ただでさえ飛来数の少ないセアカモズの中で、稀にしかいない白斑持ちの個体(←D)が日本に飛来する可能性を考えると、消極的な否定材料となると言うことができる。以上のように、セアカモズを肯定する特徴は一つも確認できない。強いて言うならば尾羽が短く感じられること(←E)くらいで、この個体をセアカモズと同定することはできない。
2.シマアカモズとの比較と親の推測
 この個体のJizzや各部の特徴から最も近いのはアカモズの亜種シマアカモズである。しかし、シマアカモズもセアカモズ同様白斑が出る個体は稀であること、さらにこの個体は尾羽が短いことから純粋なシマアカモズとは考えにくく、片親がシマアカモズである交雑個体の可能性が高いと言える。では、もう片方の親は何であろうか。初列基部の白斑については、シマアカモズ由来の特徴として考えるのは難しい。なぜなら、仮にもう片親が白斑の出る種であった場合、この白斑はその種由来と考えるのが自然だろうし、白斑の出ない種であった場合、そもそも交雑個体に白斑が出る確率は相当低いものとなるからだ。したがって、もう片親は白斑のある種である可能性が高い。よって、稀にしか出ない種同士の交雑、つまりシマアカモズ×セアカモズであることも考えにくいと言える。候補としては、オリイモズ(モウコアカモズ)、Red-tailed Shrike が挙げられる。眉斑が出ていないことや、腹に黄色味があることなどはオリイモズの特徴とも合致するため、この2種のどちらかと言うならばオリイモズが片親である可能性が高い。
4.結論
以上のことから、この個体は、シマアカモズ×オリイモズであるという結論に至った。ただし、この組み合わせの交雑個体が日本に飛来する可能性を考えると、シマアカモズの変異個体である可能性も十分にあるだろう。あくまでも今回の考察は多くの可能性の中の一つにすぎない。
5.和名について
IOCではIsabelline Shike(=オリイモズ)に対してアカオモズという和名を与え、Red-tailed Shrikeには和名を与えていない。したがって、Red-tailed Shrike≠アカオモズである。今まで便宜上オリイモズという和名が使われてきたが、国際的に正式な和名はアカオモズである。昨年の日本鳥類目録の改訂により、Isabelline Shrikeにはモウコアカモズという新称が与えられた。第七版における和名改称は批判の多いものばかりであるが、モウコアカモズに関しては評価の声も聞かれる。現在のRed-tailed Shrike≠アカオモズという状況は混乱を生むだろうから、これを機にIsabelline Shike=モウコアカモズ、Red-tailed Shrike=アカオモズという形で和名の変更を行うべきだというのが個人的な見解である。
6.参考写真
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